マッドサイエンティスト比良羅木 螺子輔 第一話 強制プログラム02

「博士素晴らしい発明だ。いったいどうなっているんだ」
「まさか、やらせじゃないだろうな?」
「なにを馬鹿なことを。わしが今までそんなインチキをしたことがあるか?」
「そうだったな。だが今日持って帰えれると言うのはいったい。」
「あわてなくてもいい。今日は時間はあるんじゃろ?」
「ああ、問題ない。あれを持って帰れるなら時間くらいなんとしても作る」
「でもどうやってもって帰る?彼女のほかにもまだ自由に動く女がいるのか?」
「いや。ここにはあの娘一人だけじゃ」
「じゃあ、どうやって?」
「あんたの後ろにいるじゃないか。」
「あの秘書さんにシステムを組み込めばいいんじゃ」
「馬鹿なことをいわないで」
今まで黙っていた瑞樹が怒りに身を震わせている。
「博士、彼女は無理だ。」
「空手と合気道の有段者でSPの訓練も受けている。」
「並みの男じゃ5~6人で掛かっても勝ち目はない」
「ふぁっはっは。そんな女を自由にするからこそ面白いんじゃないか」
比良羅木は携帯電話を手に取ると上目遣いで瑞樹を見た。
「ま、まさかもう彼女もそれで自由に動かせるのか?」
さっきのメイドの少女を目の当たりにしていたため、瑞樹もすでに自分があのおぞましいシステムに捕らえられているのかもしれないという不安に襲われた。
「まさか。これは魔法の携帯電話じゃないぞ」
その言葉を聴いて我に返った瑞樹の行動は早かった。
「社長、辞めさせていただきます。辞表は後日郵送しますので」
言うや否やきびすを返し小走りでドアをあけて出て行った。
「ふぁっはっは。無駄じゃ無駄じゃ」
比良羅木が携帯電話のボタンをひとつ押すと廊下で人が倒れる音がした。

廊下で倒れた瑞樹を筑波が抱き上げ処置室まで連れてきた。
来客用の室内履きに仕掛けられた麻酔針を携帯で操作し一瞬にして瑞樹の意識を奪ったのだと比良羅木は筑波に説明した。
服を全て脱がせカプセルの様な機会に寝かせると瑞樹の体の上を数十もの光の帯が何回も往復した。
「スキャン完了じゃ。後は電極を埋め込めば終わりじゃ。ものの30分ほどで思うがままに動く人形の出来上がりじゃ。」
「これだけでの事で自由に動かせるのか?」
「さっき見たじゃろうが」
電極は髪の毛の5分の1程の細さで長さも3mm程度しかない。体内に入っても違和感のない素材で作られているという。
カプセルを閉じてから30分弱で自動的に開き瑞樹が姿を現した。
外観からはどのような処置が行われたのかまるでわからない。
「最後の仕上げじゃ。ちょっと起こしてくれんか」
筑波が瑞樹の背に手を差し入れて上半身を起こすと比良羅木は手に持っていたボタン電池のようなものを首の後ろ、左右に一つずつ貼り付け薄いテープのようなもので結線をした。
「時間があれば手術で埋め込むんだが、お持ち帰り希望だから今回は医療用ボンドじゃ、まあ外れることはないじゃろう」
「後はおまえさんの携帯電話に基本プログラムの入ったメモリーカードを入れるだけじゃ」
「もうすぐ目が覚めるじゃろうから向こうで待っていようじゃないか」
比良羅木がリモコンプログラムの使い方を説明していると、明らかに怒りを含んだ足音が聞こえてきた。
「私に何をしたの!」
白いAラインのワンピースを着た瑞樹が、部屋に飛び込んでくるなり二人を問いつめた。
「何とか言いなさいよ」
「裸のままじゃ困るだろうと思ってマコの服を借りて置いといてやったんじゃ。良く似合っとるじゃないか」
「瑞樹君可愛いよ。普段からもこういう格好をすればいいんだ」
膝上20cm、コットン素材のワンピース姿の瑞樹には先ほどまでと違い年相応の可愛らしさがあった。
「ちゃんと、答えて!」
「パンツもあったじゃろ?ちゃんと履いてきたか?ふぁっはっはっは。」
大声を出しても話をはぐらかす二人にいらだちを覚え、飛びかかろうとした、その時
「これがロックじゃ」
という比良羅木の声を聞いた。
「ロックを解除するまで動くことはできん」
その言葉通り瑞樹は体の自由を奪われていた。
「素晴らしい。言葉を喋らせるのは、メールの様に文章を打ち送信すればいいんだったな」
「社長、私もここでウンコさせてください」
「なんだ、君もウンコがしたかったのか」
「馬鹿なことは止めてっ!こんな事をして面白いの」
「ギャーギャーうるさいときはリピートを押せばここで打った言葉をしゃべり続けるんだったな」
「ウンコ、ウンコ、ウンコがしたいの。ウンコさせてください。」
「ウンコ、ウンコ、ウンコがしたいの。ウンコさせてください。」
「ウンコ、ウンコ、ウンコがしたいの。ウンコさせてください。」
「はっはっは。文武両道で才女の誉れ高い美女が馬鹿みたにウンコウンコと恥ずかしくないのか」
「ふぁっはっは。このくしゃみと、涎をセットするとさらに見物じゃ」
「ウンコ、ウンコ、ウンコが”クシュン”したいの。ウンコさせてください。」
くしゃみをした瑞樹の鼻からは鼻水が垂れ、口からは涎が溢れてきた。
「体なんてものは微量の電気を流すだけで意志に反して動いてしまうもんじゃ」
「筋肉の収縮と弛緩とをプログラムすれば自由に動かせる。」
「首に取り付けたインターフェイスは携帯からの電波を受信して体内の電極に伝える。
電源は生体電気を常に充電しているので、半永久的に切れることはない。」
「もう一つ面白いものを見せてやろう」
「ロックは解除してシールドをオンじゃ」
「ウンコ、ウンコ、ウンコがしたい・・・・・」
リセットしたおかげで瑞樹はやっと屈辱的な言葉のリピートから解放された。
「ほれ」
比良羅木は携帯電話をテーブルの上に投げると
「どうした逃げるなら今だぞ」
と言って深々とソファーに体を預けた。
逃げてもすぐに自由を奪われると考えた瑞樹はその瞬間携帯電話に向かって駆けだした。
比良羅木も筑波も動きについて来ていない。
奪えると思った。が、携帯電話の手前で体が止まってしまい、近づくことが出来ない。
「これがシールドじゃ。携帯に触れることが出来なくなる」
奪えないと悟った瑞樹はすぐに反転して駆けだした。
電波の届かない所まで逃げることが出来れば・・・。
わずかな望みにすがりドアの前まで来たところで全身の力が抜け、立っていることも出来なくなった。
床に崩れ落ちた体が勝手に動き出し、両手で自分の足を抱え込み大きく左右に開きだした。
「ど、どうして」
「シールドのもう一つの機能は携帯から設定の距離以上離れると予め決められた形をとる」
「形状記憶じゃな。ふぁっはっはっは。」
「逃げようとした罰じゃ。ここでオナニーでもして貰おうかの」

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